花々と星々と 犬養道子

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犬養道子さんの、若い頃の海外生活をつづったエッセイ。ものすごいタフさ、行動力に感動さえします。舞台は欧米中心なので、欧米スキーの私には生活様式

2025-07-26 07:03:00 - 犬養毅元首相の孫である評論家の犬養道子さんが2017年7月24日に老衰で亡くなったとか。96歳だったというので、平均寿命以上に生きたことを考えると、その点に関しては良かったですね。犬養..

2024-10-10 10:00:00 - 中学生の頃から、留学記というのは好きでした。現実に海外旅行というのが”夢のまた夢”というほど庶民の暮らしからかけ離れた時代でしたからね。山本祐義「まあちゃんこんにちは ハイ・ティーンの見たアメリカ」とか小田実「何でも見てやろう」、犬養道子「お嬢さん放浪記」など、実際に留学した人の記録を読むたびに、海外に渡渡って学ぶということに憧れたものでした。まぁ、その分アメリカ発のTVドラマ「パパは何でも知っている」とか「うちのママは世界一」、「ドビーの青春」といったアメリカの家庭生活を描いたドラマが人気があったんでしょうね。見たことも無いような大きな冷蔵庫から季節を問わずアイスクリームが出て来たり、大きな牛乳壜から直に牛乳を飲んでいたり、ティッシュペーパーの箱からティッシュを取り出したりと、日常のさりげない行為が、日本の家庭生活とはかけ離れていた。時代が変わって、日本が高度成長を遂げ、海外旅行というのが普通に出来るようになってからも、海外で学ぶということは憧れに近いものがあった。博報堂にも一年間の海外留学という制度がありましたが、僕が会社に入った年には無くなっていた。さてさて、前置きが長くなりましたが、三笠宮様の長女・彬子女王の留学記です。オックスフォードに大学時代に1年、学習院大学を卒業してから5年間かけて博士論文を完成させるまでの奮闘ぶりが見事に描かれている。最近に読んだ中では、これほど「美しい日本語」にお目にかかったことがないほど文章が美しい。さりげない日常の事柄が普通の言葉で綴られているのですが、「品性」が滲み出てくるんでしょうね。「生まれて初めて一人で道を歩いたのは日本ではなくオックスフォードだった」と本の帯にあるように、家族や友人はもとより、いつも側近（侍女）や側衛（護衛）に周りを囲まれる生活から、一人で海外の大学に飛び込んで、初めて「孤独」という言葉を実感したとのこと。なにもかも、自分一人でやらねばならぬ…という経験を初めて体験し、その体験が自分を成長させてくれていることを噛みしめているようです。まさに、孤軍奮闘記！しかも、とても楽しんでおられる。PHP研究所の紹介には…「女性皇族として初めて海外で博士号を取得された彬子女王殿下による英国留学記。待望の文庫化！≪赤と青のガウン。それは、私が博士課程を始めたときからいつか着る日を夢みてきたものだ。五年間の留学生活中、何人もの友人が博士課程を無事修了し、オックスフォードを旅立っていく様子を何度も見送ってきた。晴れ晴れとした表情でこのガウンを身にまとい、学位授与式が行われるシェルドニアン・シアターから出てくる友人たちの姿は、誇らしくもあり、またうらやましくもあった。オックスフォード大学の厳しい博士課程を成し遂げた者しか袖を通すことを許されない赤と青のガウンは、くじけそうになったときにふと頭に浮かび、オックスフォードに来たときの自分に立ち返らせてくれる「目標」だった。≫（「あとがき」より抜粋）英国のオックスフォード大学マートン・コレッジでの、2001年9月から1年間、そして2004年9月から5年間の留学生活の日々――。当時の心情が瑞々しい筆致で綴られた本作品に、新たに「文庫版へのあとがき」を収録。」とありますが、彬子女王がオクスフォードで学ぶことは、同じくオックスフォードで学んだ父宮である三笠宮様の夢だったようです。ただし、まさか博士課程まで進んで5年もの歳月を彼の地で送るとは思っていなかったようですが、本人の強い意志に動かされて許したとのこと。父宮の方は、「オックスフォードに図書館なんてあったか？」というほど、学生生活を楽しんでいたようで、ヘンリー・レガッタにオックスフォードから選ばれる8人に入ったことが一番の自慢だとか！そして、必ず留学記を書くこと…ということを約束させられた。こちらに各章の内容が出ていますが、各章のタイトルはすべて「四字熟語」。「百川学海」、「大信不約」、「苦学力行」、「日常座臥」、「合縁奇縁」…と続いて行きますが、タイトルの裏のページにすべて出典が書かれていて、章の内容を暗示している。オクスフォードで学ぶということが、どれだけ「勉強まみれ」な生活かも分かりますし、英語を学びながら自分の研究を深めていくことがどれだけ大変なことか、良く分かります。研究テーマは、「海外に流出した日本美術に関する調査・研究」という実に素晴らしいもの。その研究活動の中で、大英博物館のバックヤードで、消失する以前の金閣寺の金堂壁画の桜井香雲の模写を発見するという幸運にも恵まれている。面白かったのは、エリザベス女王に招かれた時に、二人きりになり、緊張しきった著者の周りを沢山のコーギーが跳ね回って居たというくだり。エリザベス女王というと「コーギー犬」というほど、この犬種の犬がお好きだったようですね。女王陛下の国葬の時にもコーギー犬が棺を見送っているシーンがあったのを想い出しました。それ以外にも、日本美術の研究をするうちにカリフォルニアのジョー・プライス氏の知己を得て、研究のためにジョー・プライス邸に泊まり込んだ話なども面白かった。まぁ、勉強の話だけでなく、迷子になりそうになった話とか、イギリスの交通機関のでたらめさとか、皇族のパスポートが外交官と同じく茶色などというのも初めて知りました。そういえば、日本ラグビー協会の名誉総裁でもあられるので、PNC決勝戦で日本代表とフィジー代表の試合前のセレモニーで、両軍選手と握手をグランドで交わされていましたね。これだけの立派な人格を持った人ですから、女性宮家を立てても立派にやっていけると思うんですけど…。石破さん、保守派に押し切られず女性宮家や女性天皇の議論を早く始めてくださいな。